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第12部 世界の占い事典 / 12-1
鹿の骨を火であぶり、ひび割れで一年の作物の出来を占う神事が、いまも東京の神社で毎年一月三日に行われています。カレンダーの大安・仏滅、神社のおみくじ、画数で見る姓名判断も、日本で形を変えて育った占いです。大陸から来たものを作り替えた占いが多く、元とは使い方がまるで違うものもあります。古い神事から動物占いまで、何を使い、どう占うのかを短く紹介します。

亀の甲羅を薄く削って火であぶり、入ったひび割れの形で吉凶を読みます。中国の殷(いん。古代中国の王朝)でも亀の甲羅や牛の骨を使う占いが盛んで、その結果を刻んだ文字(甲骨文字)は、いまの漢字につながる古い文字です。
日本では六世紀ごろの遺跡から、焼いた亀の甲羅が見つかっています。のちに卜部(うらべ。占いを受け持った人々)が宮中の占いを担いました。天皇が即位して最初に行う収穫の祭り、大嘗祭(だいじょうさい)では、お供えの米を作る田(斎田・さいでん)をどの地方に置くかを亀卜で決めます。令和元年(2019年)にも皇居で行われ、東は栃木県、西は京都府に決まりました。
儀式として伝わる鹿の肩の骨(肩甲骨)を火であぶり、ひびの入り方で読みます。焼いた跡のある鹿やイノシシの骨は弥生時代の遺跡から見つかっていて、中国の歴史書『魏志倭人伝』にも、倭人は何かを始めるとき骨を焼いて吉凶を占う、と書かれています。亀卜が見られるようになるのは、それより後です。
『古事記』では、天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩屋にこもる岩戸隠れの場面で、神々が鹿の骨を波波迦(ははか)の木で焼いて占います。東京の武蔵御嶽神社(むさしみたけじんじゃ)では毎年一月三日の早朝に太占祭が行われ、骨のひびの位置から、その年の野菜や穀物の出来を作物ごとに占います。同じ神事が続くのは、ここと群馬県の貫前神社(ぬきさきじんじゃ)の二社とされます。
いまも神事で行われる夕暮れに辻(十字路)に立ち、通りかかった人が話す言葉をそのまま神の答えとして受け取る占いです。道具も術者も要りません。『万葉集』(奈良時代にまとめられた歌集)には、夕方に道で占う「夕占(ゆうけ)」を詠んだ歌があります。
江戸時代には、占いの文句を書いた紙を菓子に入れた「辻占菓子」が売られるようになりました。金沢などでは、いまも正月に辻占の菓子が並びます。アメリカの中華料理店で出るフォーチュンクッキーも、日本の辻占煎餅をヒントに日系移民が作ったものだとする研究があります。
菓子に名前が残るくじで神仏の考えを問う習慣は古く、室町時代には六代将軍の足利義教(あしかが よしのり)が、石清水八幡宮のくじ引きで選ばれています。いまのおみくじにつながるのは、一番から百番までの札に漢詩と吉凶を載せた「元三大師御籤(がんざんだいし みくじ)」で、平安時代の僧・良源(りょうげん)の名を冠して江戸時代に広まりました。
吉凶だけでなく、添えられた詩や項目別の言葉まで読むと、おみくじはぐっと面白くなります(10-4 おみくじ)。萬象暦の「今日のおみくじ」は、大吉から平までの六段階で、凶は入れていません。
このシリーズで占えますカレンダーに小さく書かれた大安・友引・先勝・先負・赤口・仏滅の六つです。暦に添えた吉凶の書き込みを暦注(れきちゅう)といい、六曜はその一つ。旧暦の月と日を足して六で割った余りで決まる、とても単純な仕組みです。
「仏滅」は、もとは「物滅」と書かれ、仏教の教えとは関係がありません。明治の改暦で政府の暦からは外されましたが、民間の暦に載り続け、いまも結婚式や葬儀の日取りでおなじみです(10-1 六曜。日ごとの六曜は暦の一覧で見られます)。
このシリーズで占えます生まれ年で決まる九つの星(本命星・ほんめいせい)と、年ごと・月ごとに変わる方位の吉凶を組み合わせて使います。たとえば1984年5月20日生まれの人の星は七赤金星です。「今年はこの方角への引っ越しがよい」と言うときの占いとして、日本で広く使われています。
もとになった九星術や方位術は中国から来たものですが、園田真次郎が大正十三年(1924年)に「気学」としてまとめ直し、いまの形になりました。ちょうど百年ほどの、新しい占いです(4-1 九星気学。自分の星の出し方は4-3)。
このシリーズで占えます生まれた日の月の位置を表す「宿(しゅく)」から、その人の性格のタイプや、相手との関係の型を読みます。宿は二十七あり、日本の宿曜では旧暦の月日から求めます。たとえば1984年5月20日生まれの人は、旧暦で四月二十日にあたり、宿は虚宿(きょしゅく)です。
四柱推命や九星気学が陰陽と五行を土台にするのに対し、宿曜は、月の通り道を二十七に分けるインドの考え方から来た別の体系です。中国で訳された『宿曜経』を、平安時代に空海が持ち帰ったと伝えられます。「こちらから見た関係」と「相手から見た関係」が別々に出るのが、この占いの面白いところです(5-1 宿曜)。
このシリーズで占えます名前の漢字の画数から五つの数(五格・ごかく)を出し、一から八十一までの数ごとの吉凶表(八十一数理)に当てはめて読みます。この形は、昭和四年(1929年)に熊崎健翁(くまさき けんおう)が『姓名の神秘』を出してから広まりました。
明治八年(1875年)に全員が名字を名乗ることが義務になり、名前が一人ひとりの公的な「しるし」になりました。その五十年ほど後に広まったのが、画数で名前を読むこの占いです。同じ名前でも、字体や流派によって画数が変わります(9-1 姓名判断。自分の名前は名前のしるべで試せます)。
このシリーズで占えます生年月日から「狼」「こじか」「ペガサス」など十二の動物のどれかに当てはめ、性格や相性を読みます。1999年ごろ、漫画雑誌の企画や本をきっかけに大流行しました。
もとは四柱推命で、動物の分け方は十二運(勢いの強弱を十二段階で表したもの。2-8)とよく対応するとされます。本格的な占術の分類を、誰でも口にできる動物の名前に置き換えたところが、この占いの工夫です(12-8)。
いまも使われている1927年に古川竹二が発表した「血液型による気質の研究」がきっかけとなり、1971年の能見正比古の本で大きく流行しました。
血液型と性格の関係は、日米一万人規模の調査でも確かめられていません。会話のきっかけとして楽しむ占いです(10-5 血液型占い)。
このシリーズで占えます並べてみると、二つの傾向が見えます。
いつ、誰が形にしたのかが分かると、それぞれの占いの使いどころも見えてきます。 亀卜や太占は、国や村の大事を決める神事。おみくじは、一人で引いて言葉を持ち帰るもの。 九星気学は、動く方角を選ぶもの。同じ「占い」でも、使う場面がまったく違うのです。
この記事に出てきた九星気学・宿曜・おみくじは、「占術ごとに占う」で試せます。生年月日を一度入れると、上の例の「七赤金星」「虚宿」のように自分の星と宿が出て、その性質や今日の巡りまで読めます。無料で、登録は要りません。
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